山歩きと人生つれづれ 第5回
北海道の母なる大雪山系 高山植物の女王コマクサに感動
長年、外来で糖尿病患者さんとお付き合いをしていると、山歩きや自然を歩くことを趣味としている方が意外と多いのに気づく。毎年山菜取りにいそしむ方々も少なくないが、歩くこと自体が楽しいし、健康にもいいので次第にファンが増えているように思う。ウォーキングがもっとも手軽で安全な、そして健康づくりに適している有酸素運動であることが広く認知されるようになった。
(上写真:大雪山系のコマクサ)
50を過ぎて山に魅せられてから、ほぼ一年おきに大雪山系におもむき、その雄大な自然の中で夏休みを過ごすことになった。麓のいで湯の宿でゆったり一年の疲れを癒しながら、山を歩きまわる至福の時。山の中でキャンプを張るなどという体力的に無茶な登山はしない。必ず温泉宿をとって、そこを基地にしてあちこちの“安全な”“身の丈相応な”山歩きに徹し、自然を満喫することを信条としている。
雨の中を歩くこともある。それも風情がある。山の天候は予測がつかない変化があり、霧が突然晴れ、下界が忽然とその雄大な姿を現すときのなんともいえない爽快感がからだを震わす。
層雲峡から黒岳を経るコース、旭岳温泉から縦走するコース、赤岳から入るコースなど様々な季節の変化と大自然のドラマを実感できるルートがあり、何回訪れても飽きることはない。
特にチングルマやツガザクラの咲き乱れる初夏の大雪山系の眺望は格別である。雪渓がいたるところに残り、スキーのストックが役に立つ。高山植物の女王といわれるコマクサとの対面は感動ものでもある。氷河期の生き証人、ハイマツの梢でさえずるギンザンマシコに遭遇するめったにない機会もあった。ナキウサギにあえるのは白雲岳というが、残念ながらまだお眼にかかっていない。
太古の昔から悠久の大自然を守り育ててきた地球環境がいまや危機に瀕している。そのことを実感できるのもまた自然からである。様々な動植物から生命をかけた警鐘が聞こえてくる。
そしてこの美しい山河と人間の営みを破壊する最大の脅威は戦争。東京の焼け野原に舞い戻った幼少の頃をふと思い出す。60年前のことだった。二度と戦争はしないと世界に誓った戦後の日本。それを保障した憲法9条改定の動きがいまや急である。『美しい国づくり』と、むなしく叫ぶ日本の首相に、冷たい沢水で頭を冷やしなさいと言ってあげたい。
その『美しい国づくり』の正体を知ったとき、国民は新たな反撃を用意するに違いない。
(内山清 医師:八雲ユーラップ医院院長)


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