路傍の草花に魅かれて

2008年12月 7日 (日)

路傍の草花に魅かれて 第12回

ヤエキンポウゲ
Yaekinbouge  ニセアカシアの項でも触れたが我が家と亀田川の間は広大な空き地であり、様々な雑草が年中生い茂っている。ある時散歩をしていて雑草の中にかれんな黄色の花を見つけた。

 小さく丸く八重咲きの花はそれはそれは可愛く、例によって一株我が家の庭にお越し願ったのである。一見弱々しげな見かけによらず、この植物は大変繁殖力旺盛でイチゴのようにランナーを伸ばし、2-3年のうちに一面を金色に染めて眼を楽しませてくれた。

 だが花が散ってしまうと、ただのみすぼらしい雑草にしか見えない。ある秋、お袋が雑草と思ってすべて引っこ抜いてしまったのを知った時、怒るに怒れず呆然としたことを今でも思い出す。

 ところでこの花の名前がどうしても分からなかった。10年近くたってようやく判明したその名は、ウマノアシガタの八重咲きタイプでおそらく栽培種が逃げ出したものであろうとのこと。ウマノアシガタではかわいそうで、別名のヤエキンポウゲがぴったりのイメージである。

(犬童伸行 医師:稜北内科小児科クリニック院長&内科消化器科医師)

路傍の草花に魅かれて 第11回

イタドリ
 04年から八雲のユーラップ医院に通っている。もちろん患者としてではなく、診療をするためである。最初は5時半起きがきつかったが、今は歳のせいか全く辛くなくなった。

 五稜郭駅のキヨスクで毎回おにぎりと週刊誌を買うため、売店のおばちゃんから「何時もどうも、行ってらっしゃい」と言われるようになった。

 さて、八雲駅から医院までは僅かな道のりだが、幅の狭い通路と線路の間に雑草が生い茂っている。そこでは四季折々に雑草が色とりどりの花をつけ、それをデジカメに収めるのが八雲行きのささやかな楽しみとなっている。その通路を抜け立派な跨線橋を渡ると医院前の大きな駐車場に出る。そこである時目を疑うような光景に出会った。

Itadori2    ドングイ(イタドリ)の若葉がアスファルトを突き破って出ていたのである。てんぷら舗装のアスファルトは確かにそれほど強固ではないだろうが、それにしてもあの柔らかい若芽が突き破るとは。

 それまでもほんの僅かな舗道の隙間に(土も無いのに)繁茂する雑草を見てはすごいと思っていたが、今回は心の底から感動させられた。雑草恐るべし。雑草学ぶべし。弱いものでもひたすら努力すれば何時か前が開ける。自分には欠けてる何かを見せつけられた気がした。

 写真をプリントしてクリニックで披露したら、ある看護師さんが「ど根性イタドリだね」。なるほどと思い、以後少しでもあやかるべく診察室にずっと貼っている。

(犬童伸行 医師:稜北内科小児科クリニック院長&内科消化器科医師)

路傍の草花に魅かれて 第10回 

ニセアカシア
Niseakasia  我が家と亀田川の間は広い空き地になっており、さる新興宗教の所有のためか長年原野同然のままです。

 先日そのあたりを散歩していたら、川沿いに白い房状の花をつけた木の多いことに気がつきました。あたり一面香水のような甘いにおいが漂っています。いい気分で帰宅したら、いやに鼻がムズムズしくしゃみが止まりません。我が鼻アレルギーの新たな原因として、ニセアカシアを自覚した瞬間でした。

 振り返れば、学生時代を過ごした札幌にはニセアカシアが街路樹として多く見られ、衛生学の教授がそのアレルギーで苦しんでいたのを思い出します。その頃は全く何でもなかったのに、歳と共にアレルゲンが増えていくようです。

 ところでアカシアというと、西田佐知子の「アカシヤの雨がやむとき」を思い出します。「60年安保」のレクイエムといわれた歌らしく「アカシアの雨にうたれてこのまま死んでしまいたい」という歌詞が、反対運動で挫折した学生や知識人の共感を呼んだということです。このアカシアとニセアカシアは別物でしょうか?確かにそうですが、日本ではニセアカシアを一般的にアカシアと呼んでいるようで、本当のアカシアはミモザといわれているそうです。

(犬童伸行 医師:稜北内科小児科クリニック院長&内科消化器科医師)

路傍の草花に魅かれて 第9回

中庭の巨大草の怪(3)
 雑草に関する本は多数所持しているが、樹木の関係は全くといっていいほど持っていない。調べようが無いと思ったが、本棚の片隅に朝日百科「植物の世界」全12巻があることを思い出した。1巻目、該当なし、次の種子植物、双子葉植物第2巻でいきなりヒットした。

Kyodaisou3_3  答えは「桐」、葉っぱもそうだが種の形がそっくりである。そういえば職員の誰かが桐に似ているね、と言っていたことを思いだした。

 後日談である。9月22日イチョウの会で松前に1泊旅行をした。宴会の翌日はお決まりのお城と寺町探訪である。血脈桜で有名な光善寺を訪れたところ、寺務所の傍らに散々悩まされた「あれ」を見つけたのである。我が病院中庭の「あれ」と瓜二つの「あれ」を見た時は、さしも不信心な私でも仏のお導きということをチラッと考えてしまいました。

(犬童伸行 医師:稜北内科小児科クリニック院長&内科消化器科医師)

路傍の草花に魅かれて 第8回

中庭の巨大草の怪(2)
Kyodaisou2  苦労はしてみるものである。人生も決して捨てたものではない(ちょっと大げさですね)。24時間あたまから離れなかった「あれ」について、ある日の朝天啓が下ったのである。

 やっぱりどこかで見たことがある、それも身近なところでしょっちゅう見ているような気がする。もしかしたらあれかな?と半信半疑ながらデジカメを持ってとびだした。我が家より数軒離れた旧家、毎日通勤で通り過ぎるその広い庭にひときわ目立つ巨大な樹木があり、いつもぼーっと眺めるだけで気にしていなかったのだが、思い切り望遠で撮ってみた。やった、これだ!。葉っぱが「あれ」と全く同じであった。おそらく鳥がその実を食べて、至近な病院の中庭で用を足し種を落としていったのであろう。

 やっとすっきりしたと思ったが、よく考えたらその巨木の名前が分からない、Y所長の御下命に対する最終的な答えにはなっていないのであった。しかしその答えは僅か1時間後に出てしまったのである(この項続く)。

(犬童伸行 医師:稜北内科小児科クリニック院長&内科消化器科医師)

路傍の草花に魅かれて 第7回

中庭の巨大草の怪(1)
Kyodaisou1  07年の夏、一部の植物好きの職員の間で話題になっていた草?がある。病院の中庭(庭とはいえないか)に直立する巨大な「あれ」のことである。

 同好の士であるY所長より、雑草おたくを自認する私に正体を明らかにせよと命じられたのは9月の初旬であった。その日から私の苦悩は始まった。

 改めてよく観察したところ、どう見ても「あれ」は草ではなく木であり、つまり私の得意分野ではないのである。だからといって、分からないというのはどうも悔しい。何より、あれほど存在感のある「あれ」の名前が分からないままでは夜も眠れない。悶々とした数日を過ごしたある日、ふと思いついた。

 「あれ」の葉っぱは巨大ではあるが、見たことのある何かに似ている、そうだ、プラタナスではないか?赤ん坊の顔が大きいように、幼樹の葉は大きいのではないか?。早速クリニックの前のプラタナスを撮影して比較してみた。明らかに違った。苦悩は深まるばかりであった(この項続く)。

(犬童伸行 医師:稜北内科小児科クリニック院長&内科消化器科医師)

路傍の草花に魅かれて 第6回

ムシトリナデシコとスイセンノウ(2)
Musitorinadesiko2  ムシトリナデシコも少々見飽きた頃、同じピンク系の野草ながら花も大きく色鮮やかな野草に出会いました。たとえは悪いが、田舎娘のムシトリナデシコに比べ深窓の令嬢のごとくに見え、ついムラムラとなってまたまた夜陰に御種頂戴に及んでしまいました。

 これがなんと深窓の令嬢に似合わず繁殖力旺盛でどんどん増え、今はムシトリナデシコを駆逐せんばかりになっています。

 令嬢の名は「スイセンノウ」、別名フランネル草といい、そもそもは栽培されていた種が逸脱して野草化したものだそうです。

 写真でわかるかどうか、先輩のムシトリナデシコは右下に細々と生き延びております。セレブが庶民を圧倒しているようで格差社会の現代を象徴しているようだというのは、ちとうがちすぎ?

 一方、この野草は「酔仙翁」とも書くといいますが、夜毎飲んではくだを巻くだけの私にとってまさに「高嶺の花」でしょうか。

(犬童伸行 医師:稜北内科小児科クリニック院長&内科消化器科医師)

路傍の草花に魅かれて 第5回

ムシトリナデシコとスイセンノウ(1)

Musitorinadesiko1  写真は我が家の玄関横のスナップです。今は家を離れてしまった子供たちが夢中で遊んだ砂場。今は雑草のたまり場となり、この時期は野草とはいえ華やかなピンク色に染まります。

 新築当時の我が家の庭は父が丹精した植木のみで、なんとなく殺風景でした。

 通勤途中にとても趣のある旧家があり、毎年春になると家の周囲が一面のピンクの野草に覆われます。あるときどうしても我が家にその彩りが欲しくなり、帰宅の途中夜陰に乗じて御種を失敬に及んでしまいました(もう時効です、ごめんなさい)。その後ピンク色はどんどんと増え、花の少ない時期の庭を彩ってくれました。

 野草に関心を持つきっかけとなったその花の名は「ムシトリナデシコ」と後に知りました。江戸時代に渡来したヨーロッパ原産の1ー2年草であり、名前の由来は茎の上部の粘液に細かい虫が付くところからだそうですが、果たして本当に虫は捕れるのでしょうか。

(この項続く)

(犬童伸行 医師:稜北内科小児科クリニック院長&内科消化器科医師)

路傍の草花に魅かれて 第4回

キツリフネ
Kiturihune  以前、雑草は子供たちにとっておもちゃであり、時におやつですらありました。

 あかのまんま(イヌタデ)をすり潰した赤い汁をままごとに使い、オオバコの茎はスモウと称してどっちが先に切れるかを競い、ゲンノショウコの反り返った種をくちびるに挟んで「口紅」などと呼んでいました。またスカンポの葉を噛んだり、若いドングイ(イタドリ)の茎をむいて食べたりしました(もちろんおいしいものではなかったが)。

 初めて出会ったのはいつごろだったか記憶は定かではありませんが、キツリフネも楽しいおもちゃです。

 さやエンドウの極小モデルのようなさやに触れると「パチン」と音がしてさやがはじけ、種が飛び散るのです。キッパリとはじけるのが快感で「やめられない、とまらない」こと請け合いです。

 赤川水源地で群生しているように本来山地で見られる野草ですが、写真は我が家の敷地内で撮ったものです。

 我が家は山の中ではありませんが、何故か他にもホウチャクソウやヤグルマソウなど街中では見られない山野草が自生しており、野草好きにはたまりません。

 「キツリフネ」は、見た目そのままの「黄色い吊り船」という意味ですが、これ以外には無いぴったりの名前だと感心しています。

(犬童伸行 医師:稜北内科小児科クリニック院長&内科消化器科医師)

路傍の草花に魅かれて 第3回

ブタナ
Butana  雑草の中には、悪意を持って名づけたとしか思えないものがいくつもあります。たとえばオオイヌノフグリ(フグリって何だかご存知ですよね?)、ノボロギク、ハキダメギクなどですが、今回取り上げるブタナもそのひとつです。

 ブタナを知っている人は少ないと思いますが、タンポポモドキといえば「ああ、あれね」と思い当たるでしょうか。タンポポに良く似てはいるがスラッとして背の高いあれです。

 20年ほど前に、野幌の妻の実家ちかくの児童公園に群生しているのを見て、タンポポと違った可憐さを感じました。後日タンポポモドキという名を知ってなるほど、と思ったのですが、更に後日ブタナともいうことを知ってあまりのイメージの違いにショックをうけました。

 ちなみにヨーロッパ原産の帰化植物であるこの草が最初に発見されたのは1933年札幌においてであり、タンポポモドキと名づけられました。その翌年神戸の六甲山でも見つかり、フランスの俗名で「豚のサラダ」ということからブタナと命名されたそうです。タンポポモドキもあまりセンスはありませんが、この命名勝負、札幌の圧勝でしょう。

(犬童伸行 医師:稜北内科小児科クリニック院長&内科消化器科医師)

路傍の草花に魅かれて 第2回

水芭蕉
Mizubashou2  写真は何の変哲も無い水芭蕉ですが、じつは咲いてる場所に大変、変哲があるのです。

 神山のはずれにある私の家の裏窓から、毎年、冬季間限定の小高い黒山が見えます。 当初は何だろうと不思議だったのですが、じつは市内で除雪された雪の堆積場でした。雪が汚いため黒い山に見えたのです。

 06年の春に赤川方面を自転車でぶらついていた時のこと、住宅街の傍らで写真の光景に出くわしました。こんなところに水芭蕉が自生しているとは、と感激したのですが、ふと目をあげると見たことのあるような黒い小山です。しばし考え込み、ようやく我が家の裏窓から見えた雪山であることに気がつきました。

 この水芭蕉はその雪山が解けた水たまりに育まれたようで、当然水は濁って汚いのですが水芭蕉たちはあくまで真白く清楚なたたずまいを見せていました。

 都会の片隅の過酷な環境で生き延びてきた水芭蕉の生命力に感動しつつ、彼らの居場所を破壊し続ける人間の営みに強い危機感を感じさせられたものです。

(犬童伸行 医師:稜北内科小児科クリニック院長&内科消化器科医師)

路傍の草花に魅かれて 第1回

 シリーズ「路傍の草花に魅(ひ)かれて」は、2007年4月(第7号)から2008年3月(第26Inudo_dr 号)まで、12回にわたってつづきました。

 路傍の草花、要するに雑草をテーマにしたシリーズらしく、ひっそりと始まり、ひっそりと終わりました。今でも根強いファンがいるという、まさに「雑草のようにしぶとい」シリーズでもあります。

 著者の犬童伸行(いぬどうのぶゆき)医師は、病院の近所に住んでいます。徒歩通勤の かたわら、雑草観察を今でもつづけています。

つるうめもどき
Turuumemodoki  何時の頃からか、ダリアやチューリップなどの華やかな花より、いわゆる雑草が気になるようになってきました。邪魔者とばかり思ってきた道端の雑草が、よく見るととても可憐な花を咲かせていることに気がついたのです。どんなに踏まれ、引き抜かれようと、耐え抜き生き抜く雑草の生命力のすごさに感動を覚えるようになりました。デジカメを手にしてからは、ふとした散歩の途中で目についた雑草を撮ることが、ほとんど唯一の趣味となりつつあります。

 おおかた理解されない世界とは思いますが、いかぽっ報編集長のご好意で数回載せて頂くことになりましたので、すみませんがお付き合いを願います。

 まずは草ではないが、これまで一番印象的だった植物です。八雲駅のプラットフォーム(注)に群生しているツル性の木本で、夏についた青く可愛い実が晩秋に黄色くなり、それがはじけると鮮やかな朱色に変わります。初めて八雲に通いだした年に目につき名前を知りたいものだと思っていましたが、あるとき偶然行きつけの飲み屋でそれで作った花飾りを見つけました。名前を聞くと「つるうめもどき」とのこと、なんとなく自分のイメージ通りの名前だったのでとても嬉しかったことを覚えています。昨年それがばっさりと切られてしまい、八つ当たりでしょうが八雲がちょっぴり嫌いになりました。

(注)道南勤医協には函館稜北病院のほかに、病院前には稜北内科小児科クリニックがあります。その他、函館市内の函館診療所、八雲ユーラップ医院、江差診療所と、四つの診療所があります。犬童医師は週1回、八雲ユーラップ医院で診療にあたっています。

(犬童伸行 医師:稜北内科小児科クリニック院長&内科消化器科医師)